1. ハーモニクスパターンとは?
ハーモニクスパターンとは、FX市場やその他の金融市場で使われる高度なテクニカル分析手法の一つです。欧米のトレーダーに特に人気があり、日本でも徐々に認知度が高まっています。
このパターンはフィボナッチ数列に基づいており、市場で繰り返し発生する特定の価格パターンを識別することで、高確率で反転する可能性の高いポイントを予測します。
ハーモニクスパターンの基本要素:
- X、A、B、C、Dの5つの点で構成されるパターン
- フィボナッチ比率に基づく価格の動き
- パターン完成後の高確率な反転ポイントの予測
- 逆張りトレードの根拠として活用できる
ハーモニクスパターンは直感的に価格の反転ポイントを見極める手法としても優れていますが、何よりも数学的根拠に基づいているため、機械的なトレード判断の基準として利用できる点が強みです。
2. フィボナッチ数列との深い関係
ハーモニクスパターンの根幹を成すのがフィボナッチ数列です。フィボナッチ数列とは「1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34…」と続く数列で、前の2つの数字を足すと次の数字になるという特徴があります。
この数列から導き出されるフィボナッチ比率は、自然界だけでなく金融市場の動きにも見られ、トレーダーたちに重要視されています。特に以下の比率が重要です:
フィボナッチ比率 | 計算方法 | おおよその値 | ハーモニクスパターンでの使われ方 |
---|---|---|---|
23.6% | フィボナッチ数列から派生 | 0.236 | 浅い戻りの目安 |
38.2% | フィボナッチ数列の項を2つ離れた項で割る | 0.382 | B点やC点の位置の判断 |
50.0% | 単純な半分 | 0.5 | バットパターンのB点など |
61.8% | フィボナッチ数列の隣り合う項を割る(黄金比) | 0.618 | ガートレーパターンのB点など |
78.6% | 0.618 × 0.618 = 0.786の平方 | 0.786 | ガートレーパターンのD点など |
88.6% | フィボナッチ平方根から派生 | 0.886 | バットパターンのD点など |
127.2% | 1.272(1.618の平方根) | 1.272 | バタフライパターンのD点など |
161.8% | 1.618(黄金比) | 1.618 | バタフライ・クラブのD点など |
これらのフィボナッチ比率を用いて、チャート上の価格変動を分析し、次の動きを予測するのがハーモニクスパターンの基本的なアプローチです。
3. 4つの基本パターン
ハーモニクスパターンには多くのバリエーションがありますが、最も基本的で重要な4つのパターンを詳しく解説します。それぞれ「X」「A」「B」「C」「D」の5つのポイントで構成され、D点が重要なエントリーポイントとなります。
3.1 ガートレーパターン

ガートレーパターンは最も古典的なハーモニクスパターンで、1935年にH.M.ガートレーによって初めて紹介されました。市場のトレンド転換時によく出現するパターンです。
ガートレーパターンの特徴:
- 形状: 「M」または「W」型の形状をしています
- B点: XA移動の61.8%の戻し
- C点: AB移動の38.2%~88.6%の戻し
- D点: XA移動の78.6%の戻しで形成(重要な反転ポイント)
ガートレーパターンの条件として、B点はX点を超えてはならず、C点はA点の価格を超えてはいけません。これらの条件が揃った時、D点での反転確率は非常に高くなります。
ポイント | 説明 | フィボナッチ比率 |
---|---|---|
エントリーポイント | D点(XA移動の78.6%の戻し位置) | 78.6% |
利益確定ポイント | A点までの反発(利益の目安) | – |
損切りポイント | X点を下回った場合(パターン破綻) | – |
3.2 バタフライパターン

バタフライパターンは蝶の形に似ていることからその名がついており、ガートレーパターンよりも大きな値動きを捉えるパターンです。
バタフライパターンの特徴:
- 形状: ガートレーパターンに似ていますが、D点がX点の価格を超える
- B点: XA移動の78.6%の戻し
- C点: AB移動の38.2%~88.6%の戻し
- D点: XA移動の127.2%~161.8%の拡張(X点よりも先まで値動きが進む)
バタフライパターンは、ガートレーパターンとは異なり、D点がX点の価格レベルを超えて進むことが特徴です。これにより、より大きな値幅でのリバースを捉えることができます。
ポイント | 説明 | フィボナッチ比率 |
---|---|---|
エントリーポイント | D点(XA移動の127.2%~161.8%の拡張位置) | 127.2%~161.8% |
利益確定ポイント | B点またはC点までの反発 | – |
損切りポイント | D点より161.8%を大きく超えた場合 | – |
3.3 バットパターン

バットパターンはコウモリの形に似ていることからその名がついており、4つのパターンの中でも比較的出現頻度が高いと言われています。
バットパターンの特徴:
- 形状: ダブルトップ・ダブルボトムに近い形状
- B点: XA移動の38.2%〜50%の戻し(ガートレーより浅い戻し)
- C点: AB移動の38.2%~88.6%の戻し
- D点: XA移動の88.6%の戻し位置で反転
バットパターンの特徴は、B点の戻りが浅く(38.2%~50%)、D点の戻りが深い(88.6%)という点です。このパターンはダブルトップ・ダブルボトムに近い形状であるため、多くのトレーダーに認識されやすい点が魅力です。
ポイント | 説明 | フィボナッチ比率 |
---|---|---|
エントリーポイント | D点(XA移動の88.6%の戻し位置) | 88.6% |
利益確定ポイント | A点またはC点までの反発 | – |
損切りポイント | X点を下回った場合(パターン破綻) | – |
D点がX点に比較的近いため、損小利大の設定がしやすいのもバットパターンの特徴の一つです。
3.4 クラブパターン

クラブパターンはハーモニクスパターンの中で最も極端な価格変動を示すパターンです。蟹(クラブ)の形に似ていることからこの名前が付けられました。
クラブパターンの特徴:
- 形状: バタフライよりもさらにD点が深く(または高く)進展
- B点: XA移動の38.2%~61.8%の戻し
- C点: AB移動の38.2%~88.6%の戻し
- D点: XA移動の161.8%の拡張位置で反転(強力な反転点)
クラブパターンはバタフライよりもさらにD点が極端な位置(161.8%)に達するのが特徴です。このパターンが完成すると極めて強い反転が期待できますが、出現頻度は4つの基本パターンの中で最も低いとされています。
ポイント | 説明 | フィボナッチ比率 |
---|---|---|
エントリーポイント | D点(XA移動の161.8%の拡張位置) | 161.8% |
利益確定ポイント | X点またはA点までの反発(大きな利益が期待できる) | – |
損切りポイント | D点より価格が極端に進んだ場合 | – |
クラブパターンは強力な反転を示しますが、バタフライとの見分けが難しいこともあるので、D点の161.8%という基準をしっかり認識することが重要です。
4. ハーモニクスパターンを使ったトレード戦略
ハーモニクスパターンを使ったトレード戦略について具体的に解説します。高確率なエントリーポイントを見極めるためのステップバイステップのアプローチです。
4.1 基本的なトレードの流れ
- チャート上でX、A、B、C点を特定する
- フィボナッチツールを使ってパターンの比率を確認する
- D点付近での価格反転の兆候を待つ
- エントリーポイント、利益確定ポイント、損切りポイントを設定する
- ポジションを取り、リスク管理を行いながらトレードを管理する
4.2 効果的なエントリー方法
ハーモニクスパターンを使ったトレードでは、D点で単純にエントリーするのではなく、以下のような工夫を加えることで精度を高められます:
- ローソク足の確認: D点付近で反転の兆候を示すローソク足パターン(例:ピンバー、エンゴルフィング)が出現するのを確認
- RSIなどのオシレーター系指標との併用: 過買い/過売りの状態を確認して、反転の可能性を高める
- 複数時間軸での確認: より大きな時間足で同様のパターンが形成されているか確認
- 分割エントリー: D点付近で複数回に分けてエントリーし、リスクを分散する
4.3 リスク管理と利益確定の方法
ハーモニクスパターンを使ったトレードでは、リスク管理が特に重要です:
リスク管理要素 | 推奨される方法 |
---|---|
損切りの設定 | X点を越えた位置、または最大でも口座の2〜3%のリスクに抑える |
利益確定の設定 | 部分利益確定を活用(例:ポジションの1/3をB点で、1/3をC点で、残りをA点で決済) |
リスクリワード比 | 最低でも1:2以上を目指す(理想的には1:3以上) |
トレール・ストップ | 反発が始まったら、徐々にストップロスを移動して利益を確保 |
5. 精度を上げるためのコツと注意点
ハーモニクスパターンはパワフルな分析ツールですが、100%成功するわけではありません。精度を高めるためのコツと注意点をご紹介します。
5.1 精度を上げるためのコツ
- マルチタイムフレーム分析: 複数の時間足でパターンを確認し、より大きな時間足のトレンド方向に沿ってトレードすることで精度が上がります
- サポート・レジスタンスとの組み合わせ: D点が重要なサポートやレジスタンスと一致する場合、反転の可能性がさらに高まります
- ボリュームの確認: D点付近で取引量が増加している場合、反転の信頼性が高まります
- パターン完成を待つ: パターンが完全に形成される前に先走らずに、D点での反転の兆候をしっかり確認しましょう
5.2 注意点と陥りやすい罠
- すべてのパターンが機能するわけではない: ハーモニクスパターンは100%の確率で機能するわけではありません。経済指標発表やニュースなどのファンダメンタルな要因で反転しないこともあります
- 発生頻度が低い: 特に長期の時間足では、パターンの完全な形成が見られないことが多いです
- 主観的な判断に陥りやすい: X、A、B、Cの点の選び方によって、D点の位置が変わってしまうことがあります
- フィボナッチ比率の許容範囲: 厳密にピッタリの比率になることは少なく、ある程度の許容範囲を持って判断する必要があります
6. 実際のチャートでの活用例
実際のFXチャートにおいて、ハーモニクスパターンがどのように形成され、どう活用できるかを具体的に見ていきましょう。
6.1 パターン検出の手順
- トレンドの方向を確認: より大きな時間足でのトレンドを把握します
- 大きな値動きを特定: X点となり得る重要な高値/安値を探します
- フィボナッチツールを活用: XAの動きからB、C、Dの位置を予測します
- パターンの形状を認識: 形成されつつあるパターンが4つのどのパターンに近いか判断します
- D点の予測位置を計算: パターンに応じたフィボナッチ比率を使って、D点の予測位置を算出します
6.2 パターン別トレード例
それぞれのパターンでトレードする際の具体的なポイントをまとめました:
パターン | 特に有効な市場条件 | エントリー戦術 | リスク管理のポイント |
---|---|---|---|
ガートレー | トレンド転換時、レンジ相場 | 78.6%の戻しでのローソク足反転確認後 | X点を越えた位置に損切りを設定 |
バタフライ | 強いトレンドが一服した後 | 127.2%〜161.8%の拡張位置での反転兆候 | 複数回に分けてポジションを取る |
バット | ダブルトップ/ボトム形成時 | 88.6%の戻しで、他のテクニカル指標と併用 | D点付近の小さな時間足でのエントリーポイント最適化 |
クラブ | 極端な過熱/過売り状態 | 161.8%の拡張位置で、RSIなどの過買い/過売りの確認後 | 小さなロットサイズでリスク抑制 |
7. まとめ
ハーモニクスパターンはフィボナッチ数列に基づいた奥深いテクニカル分析手法で、特に価格の反転ポイントを高い確率で予測できる点が優れています。4つの基本パターン(ガートレー、バタフライ、バット、クラブ)をマスターすることで、より精度の高いエントリーポイントを見つけることが可能になります。
ハーモニクスパターントレードのまとめ:
- フィボナッチ比率に基づく科学的な根拠を持つ分析手法
- 4つの基本パターンそれぞれに特徴的な比率と形状がある
- D点が重要なエントリーポイントとなり、高確率の反転が期待できる
- 他のテクニカル指標との併用や複数時間足での確認で精度が向上する
- リスク管理と部分利益確定を組み合わせた戦略が有効
ハーモニクスパターンを使いこなすには練習と経験が必要ですが、一度習得すれば強力なトレードツールとなります。デモ口座などで十分に練習した上で、実際のトレードに活用してみてください。
以上、ハーモニクスパターンの完全ガイドをお届けしました。
成功するトレードにお役立てください!
コメント